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Review

 

見に行った展覧会の記録です。

(2015年〜)

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ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力
東京都庭園美術館
 ブラジルの先住民が、一本の丸太から彫り上げた、動物モチーフの椅子の展覧会。元々民族の神話や伝統や独自の生活に結びついたものだったが、近年は外からの刺激も受け、より自由な表現になってきているという。ジャガーやコンドル、ワニなどの強面な生き物もみんなとぼけたユーモラスな表情をしていてかわいい。なかには椅子にするのが難しそうなエイなんかも、見事に椅子になっている。カメはお風呂に置きたくなるような四角くてコロンとした形をしている。表面に描かれた幾何学模様は、なんとなく庭園美術館のアールデコに呼応していて、建物との相性も抜群だった。ツルツルに磨き上げられた座面はなんとも座り心地が良さそうで、ぜひ座ってみたいなあと思ったが、座れる椅子はなかった。ただ、ソファに座りながら、座れない座るための椅子を眺めるっていう不思議な空間はあった。(2018.7.29)
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特別展 昆虫
国立科学博物館
 夏休みが始まり、危機的な暑さが少し和らいだ日に、子ども達を連れて見に行ってきた。Eテレで放送中の香川照之さんの昆虫愛の詰まった番組「昆虫すごいぜ」も私たち大好きで欠かさず見ている。今回、香川さんがオフィシャルサポーターを務めており、音声ガイドも担当しているということで、迷わず借りた。そうしたら、クワガタの昆活キャップをもらった。5歳の息子がいたく気に入って、なぜか次の日もまた次の日も、外出のたびにこれを被っている。帽子代わりとして。
 展示で印象的だったのは、カタゾウムシというフィリピンに生息するゾウムシの標本が、とっても美しかったこと。水玉模様のものはまるで曜変天目茶碗!自分は固いですよ、とアピールする為の警告色らしい。警告色とはいえ人間には魅力的にうつるからいっぱい捕まっちゃうよね。また、昆虫採集が趣味の私たちにとっては、研究者の方たちが行う、昆虫採集のテクニックVTRもとても興味深かった。
 昆虫って神様がいたずらで作ったんじゃないかって思うほど、ほんとに奇妙な色形や生態を持っていて、とっても面白いのに、私たちの住んでいるすぐ近くでそれを捕まえたり観察したりできる。楽しまないと損だ。(2018.7.26)
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全部は見えない
新宿眼科画廊
 子ども、障害のある方、現代美術家、様々な立場年齢の方が描いた絵画が、一つの空間に分け隔てなく展示してある。特にその作品にはキャプションがついていない。(別紙で確認できるようにはなっている)このような見せ方、ハンデがないのがいいなと思った。大人だから知識や技術で優れているからとか、逆に子どもだから純粋でのびのびした絵が描けるとか、有名だとか無名だとか、美術教育を受けているとかいないとか、障害の有無とか、そういったものを取っ払って、ただの絵として見せているのが、いいと思った。作品を良いと感じるということはどういうことなのか?美術の鑑賞の仕方を問いただす力の入った展覧会だった。(2018.5.8)
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ミロコマチコ いきものたちの音がきこえる
世田谷文学館
 大きい絵はいいなあ。獣の鼻息やにおいが伝わってくるような迫力があった。実物を見て描いているのか、写真を見て描いているのか気になるが、猫は飼っているだけあって、他の大型の動物の絵より色々な動きがあってより血が通っていた。鳥の絵も好き。(2018.3.10)
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世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦
板橋区立美術館
 南インドにある「タラブックス」という出版社を紹介する展示。主に手漉きの紙にシルクスクリーンで民俗画家の絵を刷って手作りの本を作っている。シルクスクリーンの技法と、民俗画の装飾的でリズミカルな絵がとってもマッチしていている。発色もとても鮮やか。
 個性豊かな民俗画家達の作品もたくさん見ることができて、とても面白かった。こんな絵が描けたらいいなあと思う豊かな絵がいっぱいだった。
 タラブックスの仕事には、大量生産ではない、真摯なものづくりの真髄があった。たくさん売ろうとするのではなく、良いものをつくるためにあえて小規模であり続けようとするという姿勢は、資本主義社会の終焉と、これからのものづくりの新しいあり方を教えてくれる気がした。日本の出版業界の次のヒントになるかもしれない。
 実際、タラブックスの本が美術館併設のショップで買うことができた。手にとると、紙の手触りとインクの匂いが本というものの魅力を直接うったえてくる。1ページ1ページが美術品のような美しい本。こんなに手間のかかった手作りの美しい本が、そんなに高くない値段で買えてしまうのは、メイドインインディアだからか。「夜の木」と「水辺の生き物」という本を買った。「夜の木」は版ごとに表紙の絵も変えているそうだ。そんな試みも贅沢で楽しい。(2017.11.26)
アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国
東京ステーションギャラリー
 とても良かった。ただの絵ではなく楽譜、物語、詩、数学的何かまで織り込まれていて総合芸術だった。山のようなノートの中にびっしりの文字と挿絵、アドルフ・ヴェルフリの王国。これ全部読んだら頭おかしくなるだろうな。精神病院で制作に没頭し、二日で鉛筆一本使い切るというからすごい。お医者さんから与えられたという色鉛筆、100年前の絵とは思えないくらい発色が良かった。アドルフ・ヴェルフリ、生前にも展覧会が何度か開かれていたり、鉄道に名前が付いていたり、スイスではかなり人気みたい。日本でいう山下清みたいな感じかしら
 アール・ブリュットの作品見るといつも「しつこい!よく飽きないな!」と思うけど、悪い意味ではなく。飽くなき制作へのエネルギーと、ずっとずっと同じことをできる凄みに圧倒される。あと生きていることと制作することがもうほとんど重なってしまっている。鉛筆取り上げたら死んじゃうんじゃないかという。これは本当に平凡な私たちには真似のできないところ。(2017.5.20)
真珠子個展「みつあみさなぎ」
TAV GALLERY
 永遠の少女、真珠子さんの個展は三つ編みにリボンお姫様やお人形であふれていました。てんこ盛りの可愛さの隙間に見え隠れする狂気がたまりません。ラプンツェルのドレスを着せてもらって7歳のむすめはご満悦です。わたしはツイッターで読んでいた「女教師しんじゅこ」の本物見られて興奮です。真珠子さん、ピンツのつなぎとメガネ姿かわいかったです。むすめは学校に提出する日記にこの日のことを書きました。(2016.10.22)
大山エンリコイサム Present Tense 
Takuro Someya Contemporary Art
 グラフィティと書道の融合のような、日本的なものを強く感じました。大山さんの人種的背景がそうさせているのでしょうか。ギャラリーの方に尋ねると、墨で書いているということでした。小さな作品は機械の仕事のように正確で細やかでした。(2016.9.15)
声ノマ 全身詩人、吉増剛造展 
東京国立近代美術館
 美術館で詩人の展覧会ってどうなんだ?と思って見に行ったけど、とっても充実した内容だったと思う。館内の天井からは時折吉増さんの声が降ってくる。多重露光の写真を覗き込んでいると、たくさんの夏服の女子高生が現れ、ガラスの陳列ケースの合間を縫う白いブラウスが残像のように残った。彼女たちの歩く革靴の音と、吉増さんが銅板を叩く音が共鳴して、詩だった。新作「怪物くん」の生原稿は、字の上から絵の具が塗ってあって、びしょびしょが乾いてくしゃくしゃしているし、字は蟻の行列みたいに紙をぐねぐね横切っていたり、細かい字がでっかい「Z」を描いていたり、内容までわからなかったけど、むちゃくちゃかっこいい。吉増さんの書くスッとしたカタカナが好き。神様がしゃべっているみたいになる。若い頃の日記を見ると、今とはまた違う字を書かれていて興味深い。館内でもらった案内の裏面がびっしり「裸のメモ」の原稿でとっても嬉しかった。それから、中上健次の原稿も見ることができて、病的とも言える密度と、独特のマス目型の四角い文字がすごかった。(2016.7.14)
2016イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
板橋区立美術館
絵本大好き。子供に読むのも、自分で眺めるのも。みんなすごく上手だった。韓国とイランの絵本原画が良かった。日本の人は外国(ヨーロッパ)風のおしゃれな背景にしてしまうのではなくて、もっと見慣れた町並みを描いて欲しい。近くの公園でとっても柄の長い虫取り網で、玉虫を取っている子供がいた。(2016.7.10)
會本久美子個展「小さい魔法」
ギャラリーknot
 ソーマトロープという、丸い紙の両端にひもが付いていて、くるくる回すと表と裏の柄が重なって見えたり、絵が動いて見えたりするという装置が100個以上壁にぶら下がっていて、自由に手にとって試すことができ、気に入った物は購入することもできる。ってなわけで、大好きな會本さんの素敵なイラストをじっくり見ながらくるくる回して、気に入ったソーマトロープを2つ購入した。オリジナルの箱も、箱に押されたスタンプも全部可愛い。それにしてもソーマトロープという響き、日本の走馬灯と似ている。どちらもアニメーションの起源になった玩具であるところが不思議。(2016.6.30)
シャルル・フレジェ展
銀座メゾンエルメスフォーラム
 世界各地の装束を撮る写真家、シャルル・フレジェが日本列島を訪れ撮影した数々の民俗衣裳やお祭りのコスチューム。背景が海原だったり、広い田んぼだったり、雪景色だったりと抜けがいいので、かっこいい。どんな最新ファッションや現代美術よりもへんてこで刺激的!発売予定の写真集予約した。届くのが楽しみ。(2016.3.5)
いしいひろゆき個展インテリア
Station Gallery Across(久我山)
地元の久我山っていう駅の改札前に、近所のおじさまやおばさまが書道の作品飾ったり、手芸の作品飾ったりするようなちょっとしたスペースがあるのですが、まさかこんなところでこんなおしゃれなイラストレーションが見られるとは!丸っこいフォルムのどことなく懐かしい、小さいとき見ていたアニメのような、やさしくてSFな雰囲気もある絵でした。(2016.3.2)
若林奮 飛葉と振動 
府中市美術館
 以前横須賀美術館で見た、犬が登場する彫刻やスケッチが好きだったので見に行った。若林奮さんにとって「彫刻は自分と犬の間にあるもの」だそう。「振動尺」っていう独自の理論を持っていて、私は半分も理解できなかったけど、何となく伝わるものはあった。木の角材から半分犬が顔を出している「自分の方へ向かう犬1」や、人と犬が四角い箱を挟んで向き合っている「雰囲気」などの犬がモチーフになっている作品が好き。若林さんが作品にこめた哲学や、几帳面さがよく出てるなあと思ったのが、庭の落ち葉を毎日毎日銅板に移して切り抜いたもの。高い梢からくるくると回転しながら地上に落ちてきた葉が、自身の手で彫刻となって手のひらの中で永遠にとどまる。この場合、自然の領域にあった葉が、自分側へやってくる、その過程が振動尺で表されるのかな。(2016.
スペインの彫刻家フリオ・ゴンサレスーピカソに鉄彫刻を教えた男 
世田谷美術館
鉄という素材は温かくも冷たくも見える、ふしぎな素材だ。キュビズムの絵画をそのまま立体的にしたような彫刻は、360度どこから見ても絶妙なバランスを保って立っている。鉄でできた菊の花は、花びら一枚一枚がものすごい繊細。すっと伸びた細い茎も、持ち上げたらぽきりと折れてしまいそう。大きな作品から細い線がヒュッと伸びているのはどこかユーモラス。硬い鉄なのに硬さを感じない。「あごひげと口ひげ」という面白い作品もあった。この作家もスペイン内戦や第2次世界大戦の時代を生きた人。人間の頭部がゴロッと横たわる作品にどきりとした。(2016.1.17)
仲田絵美写真展「よすが」 
新宿ニコンサロン
 ネットでたまたま目にして気になっていた、仲田絵美さんの写真展へ行く。仲田さんが幼い頃に亡くなった、母親の服を身にまとってカメラの前に立ってる、というセルフポートレート。半分くらいは、仲田さんのお父さんがシャッターを押した写真だそう。中には下着姿のものもある。仲田さんが小さい頃に着た(入学式?)ワンピースの隣に、その時に彼女のお母さんが着ていたであろう服をまとった仲田さんが立ってる。ふと、私は当然娘より先に死ぬのだなということを実感として思った。壁に並んだ写真をゆっくり見ていたら胸がいっぱいになってくる。かつてすぐそばにいた母とのあわい交信の記録。写真集を買おうと思って財布を見たらお金がなかったので、ビルのATMでお金をおろして、心を落ち着かせるためにトイレにこもってから会場に戻った。写真集を買って、仲田さんにサインをしてもらっている間、また写真を見ていた。縁側に仲田さんとお父さんが座っている写真があった。お父さんは携帯に視線を落としている。その写真のすぐ隣に同じ構図の写真があって、でもそこにはお父さんしか写っていない。仲田さんが消えてしまっている。すごい写真だと思った。お母さんの幽霊みたいに見えた。この写真は偶然撮れたもの、ときいてもっとすごいと思った。家に帰って写真集を開くと、遺品の写真の中に、仲田さんが先ほど指にはめていた指輪が写っていた。(2015.11.8)
最高記念室「FUTURE FOR FUTURE」
Fm
 不自然なくらい真っ白なマンションの奥に、ギャラリーがあり、入り口には青い円錐形マスクがぶら下がっていて、それがたまたまハロウィーンに子供に作ってあげたお化けのマスクにそっくりだったので、どっきりする。最高記念室は水野健一郎さんの呼びかけにより集結した5人の男性による美術グループ。平面作品が中心で、どの絵も洗練されてる。かっこよい。全部かっこよい。床にチョークで謎の魔法陣が描かれており、秘密の組織感が増していてとても良かった。(2015.11.3)
蔡國強展:帰去來 
横浜美術館
 おっきな作品がぼんぼんぼん!壁に挑む狼の群れは全部で99頭いるそうです。全部表情や色や毛並みが違って、迫力がありました。火薬の作品はあまりピンとこないけど、小難しくなく、さっぱりしてるのは好感が持てる。蔡國強さんは美術家というより、大陸から来たアスリートのよう。(2015.10.11)
春のカド グループ展
OGU MAG
 絵描きの内田百合香さんと船戸厚志さんが、定期的に行っているグループ展示が「春のカド」だそうです。グループ展の出品者は毎回変わり、その人選にもお二人のセンスが現れている気がします。第4回目にして初めて見に行ってまいりました。派手ではありませんが、じっくり見ているとじわじわくる作品が多かったです。(2015.9.2)
サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡
原美術館
 音楽の楽譜を見ているようでした。
 子供の落書きのよう、と称されるトゥオンブリー作品ですが、子供の落書きはもっと自由でエネルギッシュなのに対し、トゥオンブリーの絵は上品で、軽やか。(2015.8.6)
 
ここはだれの場所 
東京都現代美術館
 一番最初のブースのヨーガン・レールさんが石垣島の浜辺のゴミで作ったランプは、会場を宇宙ステーションのように照らし、美しかったです。ゴミを美しく生まれ変わらせるという、シンプルなアート精神が気持ちいいです。ご本人は不慮の事故で亡くなってしまったが魂がそこにあるようでした。
 岡崎乾二郎さんの手がけた、子供しか入れない美術館に、小一の娘と2歳の息子が入って行って全然出てこなくなりました。やっと出てきたと思ったら、「もしゃしたよ」と数枚の画用紙をもっており、そこには雨だれと、ほうしゃのーという文字が描かれていました。
 会田家コーナーでは、カメラを抱えた本物の会田誠さんがいました。作品撤去騒動で揺れて、ひとまず撤去はしないということで落ち着いた会田家作品。まあ、当然だろ!という感じですが良かったですね。総理の鎖国演説も見れたし、岡田裕子さんの映像作品「愛憎弁当」が個人的にはすごく爽快で面白かったです。コンピュータープログラミングが大得意らしい、息子さんの今後の活躍も楽しみです。(2015.8.2)
長新太の脳内地図 
ちひろ美術館・東京
 大好きな絵本作家であり、絵描きさんです。長新太さんの黄色が、曇った空の色が、ポカーンと広い草原にキャラクターが小さく佇む構図や、誰も真似できないへんてこストーリー、大好き。めちゃくちゃなようでばっちしデザインされていて、かわいいようでこわいようでおかしい。この方の境地に至りたい。
 世の中には説教くさかったり、ほらかわいいでしょう?感動するでしょう?という大人目線の絵本も多いけれど、長新太さんの絵本は意味とかありきたりの言葉を軽々と飛び越え、自由に大胆にどこまでも広がっていく。それにしてもものすごい仕事量で、子供の本だけでも400冊とか!初めて訪れたちひろ美術館もお花がたくさんで素敵でした。(2015.6.13)
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